1章 LVM入門

1.1 パーティション管理の悩み

 Linuxユーザーなら誰でも、パーティション管理に悩まされたことあるかと思います。
「/とswapだけにしようか、/varは2GBほしいかな。いやいやswapは実メモリの2倍必要だ…。」
 いくら悩んでパーティション設計を行ったとしても、リミットは忘れた頃に訪れます。デスクトップやワークステーションとして利用していた場合、作成したデータを蓄積する「/home」が、サーバーとして運用していた場合には「/var」や「/tmp」が溢れることが多いと思います。
 そんなとき、「パーティションが再起動なしで広げれればいいのになぁ」と思ったことありませんか?この悩みを解決する方法、それがLVM(Logical Volume Manager, 論理ボリュームマネージャー)です。
 1章ではLVMの用語を含む入門編、2章では基本操作、3章では応用操作をご紹介します。

1.2 LVM(論理ボリュームマネージャー)とは?

 LVMは、商用UNIXでは何年も前から使われてきた一般的なディスク管理の手法です。SolarisやAIX、HP-UXなどを触ったことがある方ならば、一度はLVMという言葉を聞いたこともあるかと思います。
 ハードディスクをパーティションで区切るのではなく、あらかじめハードディスクをPEという一定サイズの記憶領域のカプセルに分け、そのPEを必要な時に必要な分だけ使用します。

1.3 PE(物理エクステント)とは?

 PEとは、LVMが扱う記憶領域の最小単位です。一般的なLinuxディストリビューションではデフォルトPEサイズは4MBとなっています。
 このPEサイズは任意で指定できますが、そのサイズは大き過ぎても、小さ過ぎてもいけません。1つの「LV」(Logical Volume. 後述します)が持てるPE数には上限があり、最大65,536個までとなっています。そのため、PEサイズが4MBでは256GBまでしか扱えないことになります。
 といって、逆に大きすぎるとパーティション内のPEサイズで割り切れない分が無駄になります。
例えば、図1のように100MBのLVMパーティションをPEサイズ16MBで初期化した場合には、PEが6つ作られ4MBが余ります。これがPEサイズ64MBの場合ならば、PEが1つしか作れず36MBも余ってしまうことになります。
 最近のハードディスクの容量を考慮すると、PEサイズは16MB(上限1TB)か32MB(上限2TB)あたりがちょうどよいかと思います。
 PEサイズの設定値の範囲は、8KBから512MBまでです。

図1 100MBのLVMパーティションをPEサイズ16MBで初期化した場合
図1 100MBのLVMパーティションをPEサイズ16MBで初期化した場合

1.4 PV(物理ボリューム)とは?

 PV(Phygical Volume, 物理ボリューム)とは、物理的な記憶媒体を示します。1つのPVが1つのディスクと対応するのが一般的ですが、LinuxのLVMでは、1つのディスクと対応させることも、1つのLinux LVMパーティションと対応させることも可能です。
 Linux LVMパーティションのパーティションIDは8e(16進数)です。fdiskなどで作成する際にはパーティションIDの変更を行わなければ鳴りません。

1.5 VG(ボリュームグループ)とは?

 VG(Volume Group, ボリュームグループ)とは、複数のPVをまとめるグループです。VGを作成することで、PVをまとめて1つの大きな記憶領域として振る舞わせることができるようになります。つまり、小さなHDDでも複数台用意すれば、1つの大きなHDDとして見せることができるということです。
 最近では、ファイルサーバーやデータベースサーバーに1TB以上のデータを格納するケースも珍しくありません。1TBのパーティションが必要な場合、250GBのハードディスクを4つ用意すれば実現できます。

1.6 LV(論理ボリューム)とは?

 LV(Logical Volume, 論理ボリューム)とは、実際にファイルシステムを作る入れ物です。従来のパーティションと対応します。
 LVは、PEの集まりで出来ています。そのため、PEサイズの倍数で作成する必要があります。たとえば、PEサイズが32MBだった場合、48MBのLVは作成できません。

1.7 ファイルシステムとは?

 ファイルシステムとは、実際にファイルが格納される記憶領域です。従来の環境ではパーティション上に作られますが、LVM環境ではLV上に作られます。
 現在、Linuxで使われているファイルシステムには、Linux ext2や、Linux ext3、ReiserFS、JFS、XFSなどがあります。どのファイルシステムにも一長一短があり、それぞれの特徴を活かすも殺すも管理者次第です。

1.8 1章のまとめ

 PV、VG、LVと用語がたくさんあり、難しいと思われる方も多いかと思います。でも心配いりません。使っているうちに慣れます。「百聞は一見にしかず」と言われるとおり、LVMも習うより慣れろです。
 次の章ではLVM環境を実際に構築してみたいと思います。

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